女性は、基本的には共感性が高く、コミュニティを形成していく能力が高い方が多いのではないでしょうか。

私自身が医療福祉関係の仕事をずっとしていても、女性は比較的集団での行動を好み、集団での体操やレクリエーションと言ったものによく参加しているのですが、男性は、あまり集団になろうとはせず、個々に過ごしていることが多い印象です。

オールド・ボーイズ・ネットワークを形成する男性ですが、こういった仕事から離れた場でのコミュニティ形成はあまり関心がないのかもしれません。

しかし、この女性のこの共感性の高さも、時に自分自身を追い詰めることがあります。

今回は、キャリア形成をしていく中で、この共感性やコミュニティの形成について話をしていきたいと思います。

共感性とは、一般的な用語としては、「思いやり」ということになると思いますが、相手の感情を読み取って、寄り添うことということになります。

これは、一般的には女性の方が得意と言われています。

共感性が高いということは、相手の気持ちを察することができ、寄り添うことができるという意味で高い人間性の一つの根拠として賞賛されることが多い部分です。

しかし、共感力の高い人は、他人の気持ちを読み取って感じられる分、感受性が強すぎるという繊細さを併せ持っています。

例えば、少し強い言葉で責められると、敏感に反応してしまって、深く傷ついてしまいます。これは、責められている理由や、その理由となった自分自身の落ち度に対してだけでなく、相手が自分に向けている感情も理解をしてしまっていることに由来すると思われます。

そして、共感性は情動的共感性と、認知的共感性の2つに分類されます。

情動的共感性とは、相手の情動や感情を自分の情動や感情として感じることです。
悲しんでいる相手の傍らにいたときに、自分まで悲しくなるといった現象を指すということです。

もう一つの認知的共感とは、「相手は悲しんでいる」と理解する過程を指すそうです。

両者は同時に起きることもありますが、一方のみが起きることも十分にある、独立した過程です。

共感性が高いということは、前述のとおり、基本的には良いことである、褒められる時に使われる言葉です。相手の気持ちを推し量ることができる能力は、コミュニケーション能力の根幹としても、人間性という意味でも高く評価されるでしょう。

しかし、Ｐ．ブルームという心理学者は共感に基づく判断は、むしろ危険であると述べているそうです。

どういうことかというと、たとえば、社会福祉政策について判断するとき、援助を必要としている人の大変な気持ちが伝わってくるとか、こないとか、そういう基準で判断してはならないとしているのです。

つまり、物事について判断するとき、特に社会的な問題について判断するときは、共感に基づくべきではないとブルームは主張します。

特に情動的共感は危険で、これは、自分の近くにいて「見える」人たちに対して、かつ近しい人や似ている人には生じやすい一方で、その逆の人たちには生じにくいのです。

まったく知らない人や、目の前にいない人がどんなに辛い状況にいたとしても、私たちには情動的共感は発動しません。しかし、社会問題は、自分たちとは直接の関わりのないところで生じていることも多いのです。

だからこそ、情動的共感で物事を判断するのは危険だということです。

もう一つ、相手に苦痛を与えたいと思うときには、共感性が高いほうが、より相手の苦痛を理解でき、「適切な攻撃」を加えることができるという点で、共感性が高い方がより敵対的になりやすいということがあげられています。

もちろん、共感性のデメリットを書きましたが、共感性がないことで起こることというのは結構あります。そもそも、相手の気持ちを推し量ろうとしない人と一緒にいたいと思える人は多くないでしょう。

また、発達障害の一部の疾患の特徴に相手の気持ちや行間、その場の空気を読み取ることに難がある場合があります。そういった方をパートナーに持った時におこるのがカサンドラ症候群という疾患群があります。（これについては、後述する「共感性の高さがなぜ人を追い詰めるのか」もご参照ください。）

そういったことからもわかるように、共感性については発揮すべきところとセーブすべきところがしっかりある、ということなのです。

共感性については、前項で述べたように、実はデメリットもあり、高いばかりが良いことではありません。

前項で述べたことだけでなく、共感性が高いこと、あるいは仲間意識を高めることは、実は脳内のホルモンバランスを変え、時に人間を攻撃的にすることがあるということがあります。

具体的にどういうことかというと、ヒトは，長い人類の進化の過程で，生存競争を生き抜くために共同体を形成してきました。そして、共同体にとって「邪魔になりそうな者」を排除しようとする機能を本能的に備えていったと言われています。

それは例えば、フリーライダー（タダ乗りする人，協力行動をとらない人）、身体的能力の劣る者，多数派とは異質の者や考え方の異なる者などが候補になります。

その中で，共同体を維持するための正義感（仲間意識や規範意識）が行き過ぎて，そういった人達を排除しようという現象が生じます。一般的にはこれは「いじめ」や「ハラスメント」という形、あるいはネット上でのバッシングなどが該当します。

 さらに，ヒトはこういった行動をとる時に，ドーパミンが分泌され，その快感がときとして理性を凌駕します。

ドーパミンは、作用はいくつかありますが、快感を感じる脳内物質でもあります。

そのため，正義感が行き過ぎて「いじめ」に発展したとき，理性の歯止めが効かないことにもなるそうです。

過剰に行われるネット上でのバッシングは、こういったことが背景にあると思われますし、また、匿名であることで、歯止めがよりかからないということが考えられます。

そして、皮肉なことに、規範意識の高い集団ほど「いじめ」が起きやすいそうです。

共感性が高いということは、こういった集団のフリーライダーや、あるいは異端になりえる人自体を感じ取る能力が高いことも同時に意味しています。

つまり、場の空気、多くの人の感情を読み取ることに長けていることで、その集団の多数派意見を正確に読み取れるということです。

そうなると、自分自身が加害者になってしまうこともありますし、あるいは、多数派の感情にも、少数派の心情も敏感に察してしまうことができてしまうことで、自分自身がより多くの「負の感情」にさらされてしまうということにもなります。

こういった流れの中で、自分自身が息苦しくなったり、身動きが取れなくなったり、あるいは、意図せず、あるいは悪意無く他人を傷つけてしまうなどの多くの「しんどい経験」をすることになってしまいます。

スルー・スキルとは、自分にとってストレスや不安となるもの（他人の言葉や行動、情報等）を、自分の中に溜め込まず、上手に受け流す能力のことを指します。

このスキルを身につけることで、自分自身の心自体が安定してきます。

もし、同僚や上司が悪気はないけど、あなたにとって心無い発言をした場合、その発言を“スルー”してしまえば、そのときに生じた負の感情に縛られずに済みますし、その結果、安定した状態で仕事に臨めるようになるでしょう。

また、他人の悪口・陰口などを華麗にスルーできるようになることで、周囲からは余裕のある成熟した人間であると思ってもらえると思われます。その結果、社内での人望を集め、頼れる有能な人物として評価をしてもらえる可能性が高まるでしょう。

一見、一緒に悪口などを言い合えることで仲間意識を育てることがあるため、悪口の仲間に入らずスルーすることは、自分自身がそのターゲットになってしまうように感じるかもしれません。

しかし、こういった非生産的な行動を意外に周囲は見ていて、正しい判断をしてくれることが多いものです。

他人の何気ない一言で、仕事や身体にも悪い影響が出るのは、非常に勿体ないことです。是非、スルースキルの身につけ方を見ていきましょう。

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