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女性のキャリア形成に夫の仕事の多忙さは関係あるのか?

女性のキャリア形成に夫の仕事の多忙さは関係あるのか?

女性のキャリア形成に夫の仕事の多忙さは関係あるのか?

女性のキャリア形成に影響を及ぼすライフイベントとして、妊娠出産育児というのは外せない要素になっています。

女性は家庭を守るものであるという性役割意識から徐々に時代が変化し、現在は妊娠出産育児中においても、仕事を継続して行う方も多いのではないでしょうか。

しかし、どうしても男性並みにはいかないという方も多いことでしょう。

今回は、夫婦のライフワークバランスが、それぞれにどう影響しているかについてご紹介したいと思います。

1 スピルオーバー効果

スピルオーバー効果というものを聞いたことがありますでしょうか?

スピルオーバー効果とは、主には経済的な話をする時に出てくる言葉で、例えばA市にできたアミューズメントパークの経済効果が、周囲の市であるB市やC市にも表れるといいったようなことを示しています。

これを、ワーク・ライフ・バランスという面では、ワークがライフに及ぼす影響、あるいは、ライフがワークに及ぼす影響といった意味合いで用いられています。

私達は皆ライフを生きているわけですが、ライフを生きる自分自身も、ワークを生きる自分自身も、同じ1人の人間なので、ライフで起きたことがワークに影響を与え、ワークで起きたことがライフに影響を与えるということは、理解しやすいと思います。

ネガティブな影響のほうが頭に浮かびやすいかもしれません。例えば、仕事が忙しくなると家事がおろそかになって家庭に影響が出てしまうとか、家でトラブルが多発していると、なぜか仕事もうまくいかない、とか。

一方、実際には家庭がうまく回り始めると、仕事もうまくいくといったようなポジティブな影響もあるので、スピルオーバーには「ワーク→ライフ」のポジティブ・ネガティブ、「ライフ→ワーク」のポジティブ・ネガティブの4つのパターンがあると言われています。

精神的健康との関連性を見た場合、「ワーク→ライフ」のネガティブスピルオーバーよりも、「ライフ→ワーク」のネガティブスピルオーバーにおいて、より強い関連が認められているようです。

ライフ、つまり家庭での日常生活での領域で心配ごとや問題が起こって仕事に支障が出ることの方が、私たちのメンタルヘルスをより悪化させる可能性があるということになります。

2 クロスオーバー効果

スピルオーバー効果については、ある個人間の中で起きることを指していました。つまり、個人のライフワークバランスでの影響です。

一方、クロスオーバー効果は、周囲の人達に対してその影響が出るということを指しています。

例えば、夫の仕事の多忙さが妻に影響する、とか、妻の家庭でのトラブルが夫に影響する、といったことです。もちろん、夫婦間だけでなく、親と子供の中でも起こりえます。

スピルオーバー効果とクロスオーバー効果について同時に起こることがメンタルヘルスの問題に絡んでくるということで、海外でも、日本国内でも研究が行われています。

クロスオーバー効果についても、イメージが付きやすいと思いますが、夫の仕事が多忙で、例えばワーカーホリックのようになっていた場合に、妻の家庭での負担が増えます。それにより、スピルオーバー効果として妻の仕事に影響が出るといった形です。

スピルオーバー効果にしても、クロスオーバー効果にしても、夫婦各々との主観的幸福感に影響するということもわかっており、それがひいては子供の感情や行動の問題に影響すると言われています。

そう考えると、ライフワークバランスというのは、個人の問題でなく、夫婦や家族の問題であるということがお分かりいただけると思います。

3 女性のキャリア形成における夫の仕事

ここまで見てくると、夫の仕事の多忙さというのは、女性に大きく影響をしてきそうに仮説を立てられると思いますが、いかがでしょうか。

実際に海外の研究論文ではそのような結果が出ているようです。

しかし、日本では実は部分的な影響しかないことが言われています。

どのようなことかというと、夫の仕事が多忙なことが妻に与える影響よりも、妻の仕事が多忙なことが夫に与える影響の方が大きくなっており、この部分が海外と傾向が異なっているようです。

これは、日本ではもともとの性役割意識により、男性が外で働き、女性が家庭を守るというものがありましたので、夫の多忙さにより妻に負担がかかることが常態化しているということが考えられています。

つまり、妻にとって夫の仕事が忙しいことは「想定内」。一方、夫にとって、妻の仕事が忙しいことは「想定外」ということです。

日本らしいと言えば、日本らしいですよね。

しかし、今後は女性も男性同様、仕事と家庭を両立して歩んでいくケースは増えていくため、海外の研究報告のような形に移行していく可能性はあると思います。

そうすると、夫婦でお互いの影響度を考え、その夫婦の状態にあったバランスを構築していくことが重要ということになります。

例えば、ジジババの助けや保育園・シッターなど社会的資源を豊富に使える夫婦と、核家族で周囲にあまり使える社会的資源が乏しい夫婦では、取る必要性のあるバランスは異なってくるということになりますので、全てどういうバランスが良い!ということはできません。

しかし、夫婦でお互いにポジティブなスピルオーバー効果クロスオーバー効果が出るような状態を作っておくことが重要ということは言えそうです。

また、家庭から仕事へのネガティブなスピルオーバー効果がよりメンタルヘルスに悪影響となることを考えると、まずは家庭を健康的に運転していけるような状態を夫婦で協力して作っていく必要性があります。

まずは、夫婦で話をして、お互いにあうペース・量・方法の家庭のバランスを共有していけるようになるとよいと思います。

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