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女性のキャリアとオールド・ボーイズ・ネットワーク

女性のキャリアとオールド・ボーイズ・ネットワーク

女性のキャリアとオールド・ボーイズ・ネットワーク

女性のキャリアの障壁になるものとして挙げられているものとして、最も大きいものであるとされているものをご存知でしょうか?

それは、「オールド・ボーイズ・ネットワーク」と呼ばれるものです。

これは、成功体験を持つマジョリティが作ってきた文化のことを指しており、文字が表す通り、特に高齢の男性のネットワークのことを指します。この「オールド・ボーイズ・ネットワーク」というものは何なのか、何故、それが女性のキャリアの障壁になるのか、などについてご紹介していきたいと思います。

1 「オールド・ボーイズ・ネットワーク」とは何か?

「オールド・ボーイズ・ネットワーク」は、前述のとおり、成功体験を持つマジョリティが作ってきた文化のことを指します。

IBMで各国の女性エグゼグティブの集まりがあった時に、「なぜ企業で女性の管理職が増えないか?」という話になり、その中で「オールド・ボーイズ・ネットワークが、ビッグバリアよ」と、彼女らが言ったということで、認知されるようになってきました。日本では、ジェンダーギャップ指数が低いことが話題になり、世界に大きく水をあけられているという話が良く出てきますが、こういったことが、日本だけのことではないということが判ります。

成功した組織を引っ張って来た男性たちがつくり上げた、独特の約束やお仕事のやり方、会話の仕方、人との対応の仕方など、さまざまな約束ごとを「オールド・ボーイズ・ネットワーク」と言うのです。

例えば、飲み会や喫煙所で様々な情報交換がされており、人事や重要な決定事項が進んでしまうようなことがありませんか?

これは男の人たちは共有しているのだけれど、そういう場に参加する機会が少ない女性には蚊帳の外である場合が多いのです。

例えば、昇進を決めるときにも男性候補に対する評価は、「あいつは可能性がある」「能力がある」「やる気がある」など、ポジティブに捉えられる傾向があり、いわゆる部下というよりは子分といった方が良いような関係性の方が、たとえ実績が劣るとしても、昇進してしまうことがあります。

日本では、「腰巾着」というような言い方がありますね。

一方、女性候補の場合は、ほとんどの場合で「実績」が問われるともいわれています。つまり、「ムラ」の外にいるわけですから、判断基準はそこでしかないのかもしれません。

2 「オールド・ボーイズ・ネットワーク」の何が問題なのか?

どんな組織にもルールがあり、不文律があります。「誰に聞いたらいいのか」「誰の承認をとったらいいのか」「何がどこにあるのか」「誰が決めているのか」などは、明文化しない状態でルールが形作られることも多いでしょう。

日本の企業は、長らく男社会であったわけで、日本の経済成長などはそのモーレツに働いてくれる男性陣が回していたのです。そこでの成功パターンがあれば、それが定着していくのは自然なことです。

問題なのは、女性がこれだけ社会で働くようになっても、例えば「長時間労働ができないといけない」「終了後の上司の誘いは断れない」というような、ある種「オールド・ボーイズ・ネットワーク」の入門編のようなルールを、多くの女性はクリアできないことも多いでしょう。セクハラだ、なんだというのもあり、ネットワーク内の男性も、悪意無く異性に声をかけないで来てしまっているのです。

そうすると、「ムラ」の一員にはいつまでたってもなれません。

女性としては、体力的な問題もあり、長時間労働を継続して行うこともできない方が多いですし、毎日上司の誘いに応じて飲み歩くのも難しい。
ましてや、配偶者や子供を持つ女性であれば、よりその傾向は強まると思います。

男性は男性で、女性社員を飲みに誘うのは、ハラスメントなども含めて誤解を生むケースも多いことを知っていますので、おいそれと誘えなくなってきました。昨今であれば、コロナ禍も影響していており、その傾向は顕著になったと言えるでしょう。

女性が参加しづらいというものの他に、もう一つある問題点としては、そういった長らく同じメンバーで動くことにより生まれる連帯感は、時に排他的であることがあります。

新参者を嫌い、仲間、あるいは子分、あるいはイエスマンだけで周囲を固めておくのは、「ムラ」のメンバーとしては心理的安全性が高いのです。心理的安全性が高い社会は、そもそもそこにいるメンバーにとっては変化することを必要としませんから、余計に固定化していきます。

そうすることで、必要な情報が他に回らなくなったり、特定の人ばかりが優遇されたりするようなことも起こりえるわけです。

3 「オールド・ボーイズ・ネットワーク」は今後どうなる?

しかし、「オールド・ボーイズ・ネットワーク」は悪いことばかりではありません。

成功パターンを知っているという意味では、非常に効率の良い動きをする場合もありますし、そもそも仕事では自分に必要な情報がある場合には取りに行く必要性もあるわけです。

そして、この状態というのは、転職したての職場と同じような状況ではないでしょうか。

「誰に聞いたらいいのか」「誰の承認をとったらいいのか」「何がどこにあるのか」「誰が決めているのか」、その組織独自のルールについて、分からないことも多く、人間関係も見えない。

自分自身が転職し、新しく組織に入った場合、そのような時、皆さんであればどう行動しますか?

おそらく、知っていそうな人に、しっかり質問されるのではないでしょうか。

そして、転職したての中途入職者が、様々なことを聞いてきた場合、皆さんが迎える場合だった場合には、しっかり教えてあげるのではないかと思います。

オールド・ボーイズ・ネットワークは確かに良くない面も多いですが、広い意味では、それが必要なルールなのであれば、組織全体として明文化できるようなアプローチもあっていいのかもしれません。

一方、コロナウィルスの感染拡大防止の観点から、多くの会社でテレワークが導入され、会社での長時間労働も、飲み会も、かなり減っているのが実情です。会議も同様に、最小限になったという話も見聞きします。受動喫煙防止の観点から、職場内に喫煙所が無くなっていることもあります。

この状況であれば、大切なことや論点だけを端的に必要な人に共有していくようになる可能性はかなりあります。コミュニケーション不全になりがち、というような話も多いにありますが、今までのような形にはもう戻っていかないと思われますので、今後新しいルール、新しいコミュニケーションの仕方を構築する機会を、私達は得ることができたとも言えます。

飲み会や喫煙所で形成されてきたコンセンサスや、長時間労働で残業している人たちだけで共有してきた情報なんかがなくなり、明確化したルールで組織が運用され、実力や実績、結果で評価をされるようになっていくのかもしれません。

そもそも、以前は新卒一斉入社でずっとその職場にいることが普通で、そうなると同期との小さい差を争うレースのようなものでした。しかし、現在は雇用も流動化している上、多様化し、中途での移動も比較的当たり前に見える時代になってきています。そうなると、例えば一生懸命残業をして小さい成果を上司にアピールするという方法論はあまり有効性を発揮しなくなってしまい、むしろ、出している成果が重要視されてくるようになります。

そして、働き方にも多様性が生まれ、今までの慣習に囚われずに個人の力が最大限発揮できるようになると、よりよいのではないかな、と思います。

4 オールド・ボーイズ・ネットワーク以外に女性のキャリアを阻むもの

ここまで、オールド・ボーイズ・ネットワークについてお話をしてきましたが、実は、オールド・ボーイズ・ネットワーク以外にも女性のキャリアを阻むものはいくつかあります。

ライフイベントについては良くも悪くも影響が強いものであると思いますが、これは女性自身の中でもあるものであると思いますが、「女性性」についての呪縛があることがあげられます。

例えば、男性管理職が強いリーダーシップを発揮して組織を率いていくことはままありますし、理想の上司像としてあげられることもあると思います。

しかし、これが女性管理職ということになると、いわゆる男性的と言われる強いリーダーシップや決断力を発揮すると「女性らしくない」「共感性に欠ける」「怖い」などと言われ、逆に、いわゆる女性に分があると言われている共感性を発揮すると「決断力に乏しい」「リーダーシップが足りない」などと言われてしまう。

こういった場面をよく見かけるのではないでしょうか。

女性自身も、リーダーシップというのは、男性が発揮している強い、決断力がある、あるいはカリスマ性のあるリーダーシップを思い浮かべる場合がありますし、一方、女性は「共感性が高くないといけない」「優しい母性のようなものをはっきしなければならない」という呪縛とがある場合があります。

こういったダブルスタンダードともいえるような状態に板挟みになってしまっているのが、女性のキャリアの問題点なのかもしれません。

つまり、女性自身も「女性だからこうあらねばならない」とか、「母親だからいつも笑顔で寄り添えないといけない」と思っているし、同時に周囲もそう思っているから、自分らしいキャリア、働き方、あるいはリーダーシップはどういったものなのか、考える機会がとても少ないのです。

女性だから、男性だから、ではなく、私だから、あなただからこういったキャリアを歩んでいくのだ、という視点は非常に今後重要になってくる視点になると思います。

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