Blog
ブログ

産後の職場復帰とダブルケア

産後の職場復帰とダブルケア

産後の職場復帰とダブルケア

産後の職場復帰については、多くの不安を抱えている方も多いと思います。
第一子の方であれば、初めての子育てと職場復帰を両立させるというミッションがありますし、第二子以降であれば、さらにマルチタスクをこなしていくことになります。

しかし、子育てについては個人差こそあれ、徐々に負担は軽くなることが多いと思いますが、今社会問題化しつつあるのが、ダブルケアの問題です。

ダブルケアは、育児と介護を同時にこなすことを指しますが、これによる生産年齢人口への負担感や離職につながってしまうことなどから、新しい問題として取り上げられることが増えてきました。

今回は、このダブルケアについて、お話していきたいと思います。

1 ダブルケアとは

ダブルケアの示す範囲としては、狭義のものと広義のものがあります。狭義のダブルケアは、「育児」と「介護」の同時進行を指しています。

広義のダブルケアは、家族や親族等、親密な関係の中での複数のケアを指し、例えば、夫や自分の持病のケアと育児、障がいをもつきょうだいや子どものケアと親の介護など様々なケースがあります。

ダブルケアのみならず、3つ、4つなど多重ケアを抱えていることもあります。

ケアを担う人のことを「ケアラー」と呼び、ダブルケアを行う方は、「ダブルケアラー」と呼ばれています。ヤングケアラーの問題なども話題になっているので、聞いたことがある方もいらっしゃるかもしれません。

内閣府では介護保険で要介護認定を受けていない人や、自宅外にいる家族の介護も含めて年に30日以上と定義されています。年に30日ですので、年間に直すと月2-3日ということになりますので、週に1回、2週に2回程度、育児にプラスして介護を担っている方を対象としています。育児については、未就学児が対象とということで集計がされています。

ダブルケアを行う有業者の就業継続意向について調査した報告では、男性は79.3% 、女性は75%と、ともに7割以上が就業継続を希望していますが、特に性別役割分業意識の強い場合は周囲からの「育児や介護は女性がすべき」という圧力を感じてしまい、退職を選んでしまう場合も多いようです。

前述の内閣府の調査によると、ダブルケア人口はおよそ25万人と言われ、そのうち女性が約17万人、男性が約8万人と報告されています。

ダブルケアを行う者の平均年齢は男女とも40歳前後で、30~40代が多く、男女ともに全体の約8割を占めます。

30~40代は、いわゆる「働き盛り」の世代であり、社会的役割も大きい上、キャリア形成期の真っただ中にあるケースが多いでしょう。

しかし、ダブルケアを行う女性の48.6%が無業であり、そのうちの約6割が就業を希望しています。その反面、男性の無業者は2%しかおらず、ダブルケアを行う男女の就業状況には大きな開きがある現状があります。

しかも、ダブルケアをしているという回答があった男性のうち、配偶者から「ほぼ毎日」手助けを得ている者が半数以上となっているのに対し、女性では4人に1人にとどまっており、家庭内におけるいわゆる育児・介護におけるジェンダー格差が顕在化しています。

私は普段医療機関で勤務をしていますが、要介護となった高齢者が退院する場合に、基本的には実子がキーパーソンになっていることが多いのですが、キーパーソンが男性の場合は、その妻がサポートについていることを比較的多く見聞きしています。

ソニー生命が行ったダブルケアに関する調査2018では、ダブルケアについて中心的に関わっていると答えた理由について男女別にみてみると、男性の6割が「自分の希望で主に関わりたい」と回答している一方、女性では「自分以外に主に関われる人がいなかった」と答えています。男性で「自分以外に主に関われる人がいなかった」と答えている人は35.7%ですから、ダブルケアに関しての意識差、役割分担については男女差が相当にあると考えられます。

ジェンダーギャップ指数が低い日本の現状であるともいえるでしょう。

2 ダブルケアの問題点

ダブルケアの問題点としては、このジェンダーギャップ的な側面が多いと考えていますが、一方、男女ともに影響があるものとしては、キャリア形成期に起こるこのダブルケア問題が、キャリアの中断や停滞につながってしまうことで、本人の仕事に対してのモチベーションが低くなってしまったり、退職によって完全に仕事というキャリアから離れてしまうことにあると思っています。

育児についても介護についても、どうしても家族内で抱えてしまうというのは、日本的とも言えますが、この時期に停滞・中断すること、退職をしてしまうことで、経済的な問題も同時に抱えてしまうという問題があります。

先ほどのソニー生命が行った調査では、ダブルケアの三大不安 「家計・経済状況」「子どもへの影響」「自身の健康状況」であると報告されていることからも、これが裏付けられると考えています。

しかも、性別役割分業意識が強い場合は、その負担感は女性にのしかかることが多く、そして、多くの女性はヘルピング行動がとれないこともわかっています。

これは、女性自身に育児や介護は女性の方が得意、女性が行うべき、そうすることが良い妻であり、母であるという規範意識があるからかもしれません。

3 ダブルケアを担うことになってしまったら

結婚や出産のタイミングが後ろ倒しになることで、育児や介護が同時に起こりえるというのがいかにも現代らしい問題になっていると思います。

しかも、内閣府の調査は育児を未就学児に限定しているので、小学生や中学生の子供がいるということについては考慮されていませんので、実際にダブルケアを担う方はもっと多いのだと思います。

では、ダブルケアを担うことになってしまったら、どうしたらよいのでしょうか。

まずは、ダブルケア自体が誰にでも起こりうることで、尚且つ、外部からの支援を受けられるように情報収集を行うことが第一です。

育児であれば、家事代行サービスを使ったり、保育施設を使ったり、保育サービスを行うことで、大変な部分に外部の「手」を使って家族の負担を減らすことができます。
便利家電なんかも最近は多いので、是非活用しましょう。

もう一方の介護については、公的保険でのサービスがかなり使えるので、介護を受ける方が高齢者の場合は、介護保険の申請をし、行政の力をしっかり頼りましょう。

現在は介護関連施設もたくさんの種類があり、ニーズによって使い分けられます。

同居しているか否かにより、用いる手段は異なってくると思いますので、どちらにしても一人、あるいは一家族で抱え込まず、周囲の手をしっかり借りることが重要です。

また、有職者の場合は、職場の介護休暇等の制度や時短制度をどの程度使えるか、確認をしましょう。会社の規模や考え方にもよりますが、制度をしっかり成立させているところも増えてきていますので、まずは相談をしっかりしてみましょう。

4 ダブルケアを担うことになる前に準備をしておけること

ダブルケアを担うことになってしまってからは、時間的な、あるいは精神的な余裕がなかなか持てないことが多いと思います。

しかし、困った時に、周囲の人にヘルピング行動ができるかどうか、その行動が受け入れてもらえるかは、それまでのご自身の行動により相当な影響を受けることは押さえておかなければならないポイントになります。

育児については、妊娠中という準備段階があるわけですが、介護の問題は突然起こることもあり得ます。

個人的なことをどこまで職場でシェアをしておくか、シェアをできるかは、企業風土なども影響します。しかし、上司や同僚が自分や自分の家族の事情などを知っていると、話がスムーズに進む場合も多いものです。

問題を抱えていると昇進に響く……というお考えもあると思いますし、それは企業の風土により様々なケースがありますので、画一的な対応ができない現状もありますが、徐々に制約のある人達も継続して働くことができ、多様化した人材を受け入れて会社が運営されていく時代になっていきますし、もしかしたら、あなたがモデルケースになっていくこともあります。

チャレンジできる方は、ご自身だけでなく、後進のためにもそのような風土を作っていけると、よいのかもしれません。

こちらの記事もご覧ください。

◎産後の女性が職場復帰するまでに準備したい3つのコト
◎女性の妊娠出産をキャリアの壁にしない働き方のコツ

ブログ一覧

Contact
お問い合わせ

お問い合わせはメールにてお受けいたします。